しゃがの長文

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映画『蜜のあわれ』を観た。▼室生犀星の晩年の作品の、2016年の映画化。1959年に書かれた原作は読んだことがないが、蜜のあわれは全編セリフという特殊な形式によって知られる。老作家と、人間の姿を取り人間の言葉を話す金魚、そして老作家を想う幽霊の話だ。▼室生犀星は『性に目覚める頃』を読んだことがある。ジュブナイル文学と言われても全く違和感がないほど、少年の丁寧な心情の描写が小綺麗な作品だった。犀星の中ではおそらく、性とはエロのことのみを指すのではなく、思春期の爆発的な感情、人間の美への賛歌を包括的に性と呼んでいたらしい。▼しかし『蜜のあわれ』では金魚が老作家を、言葉巧みにごまかしているだけだ、助平だと罵る。原作の官能的な会話から連想される状況を、まさにというカットで映像化したのが本作だった。幻想文学は映像化しづらいと評判だが、『蜜のあわれ』は大杉漣の演技力でやり遂げた。良い映画だったと思う。